桜となって空に爆ぜる。

 とある知人が、戦争の話をして下さった。

 

 特攻隊がどんな想いで儚く死んでいったのか。涙を浮かべて言葉を紡いでいる知人の前で他人事のように、頭の隅っこで考えてみる。

正直戦争なんて興味のかけらもなかったし、平成生まれの私には関係ない。

でも、人生観の話をたくさん聞かせてもらった次の日。ふと、それについて興味がわい た私は近くの航空資料館に足を運んでみることにした。

 資料館の駐車場に車を停め入り口に向かう道中、お年寄りの集団とすれ違った。

きっと視界の端にあるツアーバスの客だろう。若者の分類に入るだろう私を、物珍しそうに見やっていた。

 

 案内係の言う通り、まず2階にある資料を眺めることにした。その空間には戦時中の茶碗や特攻隊の男の遺書などが、ガラスの向こうで静かに眠っていた。

「茶碗」と名付けられた皿ーーー。茶碗というより、痩せこけた犬のご飯を入れる器のうよう。今となっちゃあ考えられないな、と思った。

  となりのガラスには、汚れてしまった紙に筆の文字が並んでいて気になって覗き込んではっとした。なぜなら、冒頭に「特攻隊に選ばれて光栄だ。日本男児として、名誉あることである」と記されていたから。

 わたしはその遺書を黙読した。ガラスに指紋がついてはいけないのに、夢中で文字を追った。しばらくして、眼球が紙の左端まで追いついて顔を上げた。改めてその紙を見つめて疑問に思う。これから死にに行くというのに、なんて誇りに満ちているのだろう。

 

それから、館内を探索していろんなものをみた。刀、銃、旅立つ友への寄せ書きを集めた日本国旗。歩を進めながら思うことといったら、それにしても本当によくこの時代まで形を維持し、見つけてもらえたなあということだった。

 だいぶ色んなものを見て歩いた先に、特攻隊の人物の写真が壁一面に飾られた部屋にたどり着いた。白黒の若い男たちの顔写真が並ぶ光景は、少し腰が引ける。

 

 おそるおそる足を踏み入れて驚く。その奥にも、写真がずらりと並んでいて、その下には名前まで書かれていた。胸の奥がぎゅっと絞められたような気がして、目を伏せた。

 空間の真ん中。テーブルの上に並べられたいくつかのファイルが気になり、そのひとつを手に取るとそれは神風特攻隊の遺書を集めたものらしい。ぱらぱらページをめくり、ひとつの遺書を読む。「母上喜んでください。私は特攻隊に選ばれました。日本男児にとって最も誇らしいことです。笑って死にます。兄弟のこと、よろしくお願いします。それでは、」 さよなら ーーーぽた、と雫が垂れた。最後のひとことに、なんだか涙が溢れて止まらない。どう生きていけばそう強くなれるのか、無力な私には考えても理解できそうになかった。 怖く、なかったのだろうか。しかも、喜んで死んでいった彼らは19歳や20歳ばかり。文章からにじみ出るその鋼のような精神の強さは、自分は今まで何をしてきたんだろうとこれまでの怠惰を恥ずかしめるのには十分だった。